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[Hike VC News] ヘルスケアの新指標デジタルバイオマーカーとは?/説明可能なAI技術が続々発表/相次ぐ主要IT企業によるAIスタートアップ買収


Hike Ventures (ハイクベンチャーズ) News Letterのバックナンバーです。
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Hike Ventures News Letter Vol.29 (10/1)


 老舗の保険会社John Hancockが、今後インタラクティブ生命保険のみを販売することを発表しました。インタラクティブ生命保険とは、ユーザが、ウェアラブルデバイスやスマホでアクティテビィをレポートすると、例えば、歩数ゴールを達成したら保険料金をディスカウントしたり、ギフトカードがもらえるというインセンティブが付いてくる生命保険です。

John Hancockがインタラクティブ生命保険で提携している英国Vitality社によると、アクテビィティレポートしているユーザは、なんと13年から21年も長く生きているということです。これは、インセンティブによりユーザがより活動的になったということもあるでしょうし、アクティブで健康なユーザほどインタラクティブ保険を選ぶ傾向があるという傾向もあるのかもしれません。

より活動的になれば、より健康になるということで生命保険会社も加入者もWin-Winになるようなインセンティブを付け、それをきちんと計測するためにウェアラブル等のデータを活用する保険会社。さらに最近では、ウェラブルやスマホから得られるユーザの行動、心理状態に関するデータを分析し、そこに何かしら健康状態に関するシグナルを得ようとする研究が盛んになっています。そして、これらデジタルデバイスから取得される人の生体に関する指標は、“デジタルバイオマーカー”と呼ばれています。

デジタルバイオマーカーは、センサーの精度向上、低価格化、常時モニタリング、そしてAIの進化により可能になり、特に製薬会社が注目しており、スマホなどを使って簡単に参加できるリモート臨床試験を提供するスタートアップがVCから多額の資金を調達しています。(evidation, SagaBionetworks, Science 37など)

例えば、evidation社は、慢性痛と生活習慣の関係に関する一万人規模のリサーチを行い、ユーザのこれまでの診察記録に加えて、ウェアラブルのデータから取得したアクティビティや睡眠などの日々の活動に関するデータも利用しました。evidation社では、その他にも動脈硬化を発症する患者とそうでない人の生活習慣の違い、メンタルヘルスと生活習慣の関係性に関するリサーチなども行っています。また、日本の製薬会社でもデジタルバイオマーカーの研究が進んでおり、大塚製薬は、Science37へ投資を行い、同社と精神医学分野でデジタルバイオマーカーを利用した臨床試験の開発を行うことを発表しました。また武田薬品も、Mindstrong社とメンタルヘルスに関わるバイオマーカーを一緒に開発することを発表しています。

新しいApple Watchのように心電図が取得できたり、Galaxy S9, S9+で搭載されるセンサーで血圧、脈拍の計測ができるということですから、普段私たちが身につけているデバイスから取れる生体情報は今後も増えてくることが予測されます。それらのデータからユーザの健康に関する洞察をどれだけ得られるかは、AIリサーチャーの腕の見せ所ですね。

バイオマーカーのさらに詳しい情報は、Rock Health ‘The Emerging Influence of Digital Biomarkers on Healthcare’をご覧ください。

余談ですが、CBInsightによると、最近Walmartが、ハンドルからユーザの心拍、体温、ストレスレベルを読み取るショッピングカートの特許を公表しました。お客さんの体調の異常を検知したら、店員がすぐにヘルプできるようにすることが目的のようです。

イメージは、United States Patent and Trademark Officeより


【トピックス】

モビリティ

  • 北京市が自動運転車をテストできる道路を11追加
    北京市は、今年の3月に33道路で自動運転車のテストを許可したが、今回それにさらに追加する。目的は、自動運転車の開発を加速させるため。

ロボット

  • Alibabaがサービスロボット事業に参入
    Alibaba AI Labが開発したSpace Eggはホスピィタリィ業界向けのロボット。自走をして、食事を部屋まで運んだりしてくれる。10月に最初のホテルでの稼働が始まる予定で、今後はホテル以外のサービス業へ利用も広げていく予定。

写真は、THE VERGE ‘Chinese e-commerce giant Alibaba has built a robot porter for hotels called Space Egg

説明可能なAI

  • MITのリサーチチームが人間のように考えるAIシステムを開発
    同システムは、画像とその画像に対する質問に回答するAIで構成されており、回答部分は、特定の問題を解決するサブモジュールと、どのサブモジュールを使うかを支持するコントロールモジュールからなる。例えば、以下の写真に、大きい鉄製のシリンダーはいくつある?と質問すると、大きい物体だけを探すサブモジュール、鉄製のものだけを探すサブモジュール、シリンダーだけを探すサブモジュールが実行され、それぞれのサブモジュール単位の結果を確認することができる。このため、最終的な結果に対して、どのサブモジュールが利用されたか、精度が悪いのはどのモジュールかが分かるのでチューニングがしやすく、AIがどのように考えて結果に至ったかが分かりやすい。リサーチペーパーは、こちらでダウンロード可能。

画像は、MIT News ‘Artificial intelligence system uses transparent, human-like reasoning to solve problems

  • GoogleがTensorFlow向けにデータバイアスを確認できるツールを発表
    ツール名は、What If Tool。プログラムを書かなくても、各パラメーターが、結果にどのような影響を与えるかを確認することができる

画像は、VB ‘Google’s What-If Tool for TensorBoard helps users visualize AI bias’より

  • IBMがAIを監査するシステムをリリース
    同システムはAIシステムを解析し、AIが特定の答えに至った説明、AIの中にバイアス(偏り)が入っていないかを精査する。バイアスが入っていた場合は、こういったデータを足した方がいいというオススメも行う。Watsonの他、Tensorflow, SparkML, AWS SageMaker,  AzureMLに対応。

  • 富士通が少ないデータからでもAIをトレーニング可能且つ説明可能なAI技術を開発
    この機会学習のモデルはWide Learningと名付けられ、教育用のデータが少ない場合や不均衡な場合でも、それらのデータから多数の仮説を作り出し、重要と思える仮説への重み付けを自動で行う。医療データやマーケティングデータでの実験では、ディープラーニングを使った場合よりも精度の向上が見られた。どの仮説を使って結果を導き出しているのかを人が確認できるため、AIのブラックボックス化を防ぐこともできる。

業界ニュース

  • AlibabaがAIチップを開発する子会社を発表

    Alibabaは、4月にマイクロチップメーカーのC-Sky Microsystemsを買収している。Jack Ma氏は、米国との貿易摩擦が高まるなか、AI関連のコアテクノロジーの米国依存を下げようとしている。最初のAIチップを2019年の後半にリリース予定。

  • FacebookがモントリオールのAIラボの拡張を発表
    同社は、モントリオールのAIラボにて、New York大学とのMRIの高速読み取りなどの基礎研究を行っている。現在の20名体制から60名体制にする予定


【調達ニュース】

フィンテック×AI

  • Responsive (Vancouver, Canada) Seed $1.1
    顧客の行動から、顧客が抱えるリスクやニーズを自動で分析し、金融機関がとるべきアクションを提案してくれる。
    Plug and Play, PayPal, Dropbox, Lending Clubから調達

  • Empower (San Francisco, CA)  Seed $4.5M
    ミレニアム向けのネット銀行。既存の銀行と組んで、銀行口座とデビットカードを発行。デビットカードを利用すると1%キャッシュバックと貯金に対して1.85%の金利を与える。また、ユーザに対して様々なお金関連のアドバイスを提供する。現在25万ユーザ、貯蓄高は$2.2B。
    Initialized Capital, Sequoia Capitalから調達。

  • Cleo (London, UK) Series A $10M
    パーソナルファイナンスアドバイザーアプリ。テキストメッセージで、ユーザの支出状況や、支出可能な金額など様々なアドバイズを提供。現在、英国、米国、カナダで60万ユーザ。毎週3万人増加している。今後12ヶ月で22カ国へ進出予定。
    Balderton Capital, LocalGlobeから調達

ヘルスケア×AI

  • Apprentice.io (Jersey City, NJ) Series A $8M
    製薬、バイオ、製造業向けのARインタフェースを提供。
    Pritzker Group Venture Capital, Hemi Ventures, GFR Fund, Silverton Partners, The Venture Reality Fundから調達

  • uBiome (San Francisco, CA) Series C $83M
    体内微生物の検査キットを提供。今後は創薬分野へ進出。
    OS Fund, 8VC, DNA Capital, Dentsu, Y Combinatorから調達

  • MeMed (Haifa, Israel) Series C $70M
    病気の原因となっているバクテリアや菌を特定し、抗生物質の投与に関する意思決定を助ける。
    Ping An Global Voyager Fund, Foxconn, Caesarea Medical Holdings, Clal Insurance, Phoenix Insurance, OurCrowd, Social Capital WTI, Horizon Venturesから調達

  • IDx (Coralville,IW) Series A $32.6M
    糖尿病性網膜症の徴候を網膜スキャンで診断技術を提供。FDA認証済み。
    8VC, Optum Ventures, Heritage Provider Networkから調達

写真は、IDxのホームページより。

  • Butterfly Network (Guilford, CT) Series D $250M
    2000ドルで買える超小型超音波診断デバイスとアプリ(有料サブスクリプション)を提供。スキャンしたデータはアプリ上で解析され問題箇所の発見などをサポート。産科検査、筋骨格検査、および心臓の検査など13の検査でFDAの承認を得ている。
    Fidelity Investments, Fosun Pharma, Bill & Melinda Gates Foundationから調達

写真は、Butterfly Networkのホームページより。

  • AbCellera (Vancouver, Canada) Series A $10M
    サンプルのマイニングと機能プロファイリングにより、病原体に対する希少抗体を発見し、新しいワクチンの設計に役立てる創薬テクノロジーを開発。
    DCVC Bioから調達

マーケティング×AI

  • Hyp3r (San Francisco, CA) Series A $17.3M
    ロケーションベースのソーシャルメディアマーケティングプラットホーム。ユーザがソーシャルメディアに投稿をした瞬間にその位置と写真の内容を解析し、マーケターが最適なアクションを起こせるようにする。
    Structure Capital, Rokk3r Fuel, Thayer Ventures, Ocean Azul Partners, Silicon Valley Bankから調達

エンタープライズ

  • UiPath (New York, NY) Series C $225M
    RPAプラットホーム。
    Sequoia Capital, CapitalG, Accelから調達

  • Ultimate.ai (Helsinki, Finland ) Seed $1.3M
    企業のコールセンター向けのプロダクト。ユーザからの問い合わせに対するベストな回答の提案と、よくある質問に対する回答の自動化を行う。
    HV Holtzbrinck Ventures, Maki.vcから調達

  • AI Foundation (San Francisco, CA) Venture Round $10M
    AIの民主化と非集中化を目指し、パーソナルAIの開発を行なっている。最初のプロダクトとして、AIとユーザが力を合わせてフェイクニュース・画像を検知するReality Defenderをローンチ。現在商用向けのプロダクトを開発中だが、全貌は不明。
    Endevor, Founders Fund, Correlation Ventures等から調達

  • WalkMe (San Francisco, CA) Series F $40M
    ユーザがストレスなくアプリやWEBサイトを利用できるようにサポートするシステムを提供。Workdays, ORACLE, SAP製品などに対応しており、使い方が分からない従業員に対して、適切なヘルプコンテンツなどを表示してサポートし、従業員がソフトウェアを使いこなすのをサポートする。
    Insight Venture Partners, Mangrove Capital Partnersから調達。

カメラファースト

  • Blippar (London, UK) Series E $37M
    ARとコンピュータビジョンのSDKを提供。
    Candy Ventures, Qualcomm Venturesから調達

  • Twenty Billion Neurons (Berlin, Germany)  Series A $10M
    ユーザのハンドジェスチャーを認識するコンピュータビジョン技術を開発。
    M12, MFV Partners, coparion, Creative Edgeから調達

  • Capella Space (Palo Alto, CA) Series B $19M
    従来の技術では難しかった悪天候、夜間時の衛星からの地表の撮影の問題を解決。どのような状況でもクリアな地表写真を撮影できる技術を開発。
    Spark Capital, Data Collectiveから調達

コアAI

  • DarwinAI (Waterloo, Canada) Seed $3M
    ユーザが利用しているディープニューラルネットワークを理解し、最適化(サイズ、スピード)するAI ‘Gnerative Synthesis Platform’ を開発している。また、結果に至る理由を理解することで、精度を上げることも助ける。
    iNovia Capital, Obvious Venturesから調達。

オートモーティブ/モビリティサービス

  • WayRay (Zurich, Switzerland) Series C $80M
    ARナビゲーションシステムを提供。
    Porche, Alibaba Group, China Merchants Capital, JVCKenwood Corp, Hyundai Motor Companyから調達

写真は、Wayrayのホームページより。

  • Lunewave (Tucson, AZ) Seed $5M

    自動運転車向けのレイダーテクノロジーを開発。
    Fraser McCombs Capital, BMW i Ventures, Baidu Venturesから調達

  • Netradyne (San Diego, CA) Series B $21M
    トラックなどの商業ドライバーの運転をコンピュータビジョンを使ってモニタリングを行い、ドライビングをスコアリング。
    Reliance Industries, M12, Point72 Venturesから調達

写真は、Netradyneのホームページより。

ゲーム×AI

  • Illumix (Menlo Park, CA) Seed $8.6M
    ARゲームディベロッパー。
    Maveron, Lightspeed Venture Partners、451 Media Group, Unusual Venturesから調達

HR×AI

  • Hiretual (Mountain View, CA) Series A $5M
    WEB上からベストな人材をソーシングしてくるツールを提供。
    Northern Light Venture Capitalから調達

  • Leena AI (Delhi, India) Seed $2M

    従業員からの人事関連の質問に自動で回答してくれるチャットボット。
    エンジェルから調達

  • Pymetrics (New York, NY)  Series B $40M
    ニューロサイエンスに基づくゲームをプレイしてもらって、求職者が入社した後にパフォーマンスするかどうかを予測する。
    General Atlantic, Workday Ventures, Salesforce Ventures, Khosla Venturesから調達

不動産×AI

  • Opendoor (San Francisco, CA) Series E $400M
    住宅不動産の自社買取と販売を行うプラットホームを運営。
    Softbank Vision Fundから調達

ディベロッパー

  • Mabl (Boston, MA) Series B $20M
    ソフトウェアの機能テストの自動化。ユーザインタフェースが変更された場合のテストスクリプトの更新や問題箇所の発見などを自動で行なってくれる。
    GV, CRV, Amplify Partnersから調達

  • Instana (Chicago, IL) Series C $30M
    アプリケーションのパフォーマンスモニタリングとパフォーマンス改善方法を提案してくれる。
    Meritech Capital, Accelから調達

エネルギー / インフラ

  • Autogrid (San Francisco, CA) Series D $32M
    エネルギーインフラの最適化を行うプロダクト群を開発。例えば、将来の電力消費を予測し、クリーンエナジーを問題なく提供できるようにグリッド全体の供給量の調整をサポートする。
    E.ON, Foundation Capital, Total Energy Ventures, Energy Impact Partners等から調達

  • Kayrros (Paris, France) Series B $24.5M

    エネルギー企業向けのデータプラットホーム。社内外のデータから、経営の意思決定に必要なデータや予測を行う。

    Cathay Innovation, Index Ventures, AtlasInvest, Primwest, Korelya Capitalから調達

量子コンピュータ

  • Bleximo (Berkeley, CA) Seed $1.5M
    マテリアルや創薬向けの分子シュミレーションなどの分野特化型の量子コンピューティング技術を開発。
    Eniac Ventures, Boost VC, Creative Ventures, KEC Venturesから調達

セキュリティ

  • Snyk(London, UK) Series B $22M
    オープンソースを利用する上でのセキュリティリスクを自動で検知。
    Accel, GV, Heavybit, Boldstart Venturesから調達

  • Forter (New York, NY) Series D $50M
    Eコマース運営者向けの詐欺防止プロダクトを提供。
    March Capital, Salesforce Ventures, Sequoia Capital, NEA, Scale Venture Partnersから調達。

  • Darktrace (Cambridge, UK) Series E $50M
    ネットワークトラフィックデータを解析し、不正なトラフィックを検知し通知してくれる。
    Vitruvian Partners, KKR, 1011 Venturesから調達


【買収ニュース】

  • Nestがスマホでヘモグロビン値、赤ちゃんの黄疸、喘息の診断を行う技術を開発しているSenosisを買収

  • Impact Groupがソーシャルネットワークの写真を解析しユーザのプロファイルを構築するCluepを$40Mで買収

  • Siriusが音楽アプリのPandoraを$3.5Bで買収

  • Appleが音楽アプリのShazamを$400で買収

  • Slackがプロダクティビティソフトウェアを開発するAstrobotを買収